700人の手が、一杯になるまで。 — ケニア・カラツ・ファクトリーから届いた豆のはなし

700人の手が、一杯になるまで。 — ケニア・カラツ・ファクトリーから届いた豆のはなし

朝、いつもの豆を挽くとき。
カップに注がれる、見慣れたあの色。
その一杯の向こう側に、地球の裏側で重ねられた、たくさんの小さな手仕事があることを、
ふと思い出してもらえたらと思って、今日は書いています。
新しく入荷したケニアの豆、「カラツAA」のお話です。

700人の、小さな手仕事
ケニアの首都ナイロビから、車で北へ少し走ったところ。標高1,800メートルを超える高地に、カラツ・ファクトリーという小さな精製工場があります。

「ファクトリー」と聞くと、機械の並ぶ大きな工場を思い浮かべるかもしれません。けれど、ここは少し違います。

カラツが向き合っているのは、周辺の4つの集落で暮らす、700人の小規模な農家さんたち。みなさん家族で小さな畑を持っていて、毎朝、自分の手で摘んだ完熟のチェリーを、ファクトリーに持ち寄ります。

700人分の、小さな籠。
それが集まって、ひと袋の豆になる。
このコーヒーは、そういう成り立ちのコーヒーです。

二人三脚、という言葉
ファクトリーの仕事は、ただ豆を買い取って精製することではありません。

農家さんへの資金援助。栽培の技術指導。よりよい品質を目指すための、地道な対話。カラツの人たちは、農家さんと二人三脚で品質を磨いてきました。

1965年の設立から、半世紀以上。
代が変わっても、続いてきた関係です。
ひとりでは作れないものを、みんなで作る。
それを、急がずに、長く続ける。
ヨコロンが、この豆に惹かれた理由のひとつが、ここにあります。

水を、土に還す
カラツのもうひとつの素晴らしいところは、環境への向き合いかたです。
コーヒーを精製するときには、たくさんの水を使います。本来であれば、その水は汚れて川に流れていってしまう。多くの産地で、それは見過ごされてきた現実でした。

でも、カラツは違いました。
水を循環させて何度も使う。排水は、何層ものフィルターでていねいにろ過してから、自然の土へと戻す。生活の水も、コーヒーの水も、汚さない。

派手な認証マークがついているわけではありません。

ただ、半世紀以上、当たり前のように続けてきた、彼らの選択です。
「持続可能」という言葉が生まれるよりも、ずっと前から。

ヨコロンが、この豆を選んだ理由
700人の手が摘んで。
ファクトリーが、ていねいに精製して。
日本へ丁寧に運んでくれて。

そして、六甲の焙煎所で、わたしたちが一粒ずつ、火を入れていく。
そのバトンの最後を、しっかり受け止めたい。
そう思って、焙煎しています。

そして、一杯の味へ

長い前置きになりました。
肝心の味のお話を、最後に。
ひと口飲むと、まず華やかな果実の香りが立ちのぼります。
ブルーベリー、カシス、プラム。艶やかで、ちょっとエキゾチックな印象です。

そのあと、舌の上に残るのは、ビターキャラメルとバニラのような、
深く豊かな甘み。粘り気のある、しっかりとしたボディ感。飲み終わったあとも、
その複雑な余韻が長く続いていきます。

ケニアらしい、輪郭のはっきりした味わい。
中煎りで、その魅力を引き出しました。

いつもの朝に、少しの奥行きを
明日の朝も、たぶん、いつもと同じ一杯を淹れる。
それでもいいと思うのです。

ただ、もし気が向いた朝に、このカラツのお豆を淹れてみてくださったら。
あの土地の風や、700人分の籠や、土に還る水のことを、
ほんの少しだけ思い出してもらえたら、嬉しいなと思います。

知ってから飲む一杯と、知らないで飲む一杯。

味そのものは変わらなくても、その時間の感じかたは、きっと少しだけ、違うはずだから。

Kenya Karatu AA
ケニア カラツAA/中煎り/トップスペシャルティ
フレーバー:ブルーベリー・カシス・プラム・ビターキャラメル・バニラ

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https://www.yokoron.com/products/kenya-karatu