遠回りに見えた道のりは、全部このためだった ― 与論島コーヒー試飲会の記録

遠回りに見えた道のりは、全部このためだった ― 与論島コーヒー試飲会の記録


2026年3月1日から3日まで、与論島でコーヒーの試飲会を開かせてもらった。
神戸で自家焙煎の店を構えて、ひと月も経たないうちの、故郷への帰郷だった。


準備をしていた神戸の焙煎所では、豆を煎りながら、ずっと二つの気持ちが行き来していた。「誰か来てくれるかな」という不安と、「待ってるよ!」とメッセージをくれた友人の笑顔。


どちらも本当で、どちらも私を動かしていた。

荷物を詰めて、飛行機に乗って、三月なのに気温二十度の与論に降り立ったとき、空気のやわらかさに肩の力が抜けた。その足で、会場のYoron emA(茶花)へ向かった。


 

初日、扉を開けて最初に飛び込んできてくれたのは、中高で同じ部活だった仲間や同級生だった。


「待ってたよ!」——その一言で、張り詰めていたものがほどけた。そこから三日間、本当にたくさんの人が来てくれた。「コーヒー好きなんです!」と言いながら入ってきてくれる人。

通りがかりに「なにしてるの?」と覗いてくれる人。

噂を聞きつけて訪ねてきてくれる人。



与論島中の人が、それぞれのかたちで会いに来てくれた気がした。

試飲に用意したのは五種類。メキシコ、ペルー、エチオピア、ボリビア、グアテマラ。



なかでも島の人にいちばん飲んでほしかったのは、メキシコのマヤビニックコーヒーだった。



マヤの先住民が、先祖から受け継いだ農法で、無農薬・手摘みで大切に育てている豆。
与論の人たちも、ご先祖を大切にする島に生きている。遠く離れた土地の営みなのに、どこかで通じ合っている気がして、この豆を持って帰りたかった。

 

三日間のあいだ、何度も胸が熱くなった。「病気をする前より、表情がとても良くなったね。イキイキしてるね」——そう言ってくれた人がいた。ずっと見ていてくれた人がいた、気にかけてくれていた人がいたんだ、と思った。

治療中のことを覚えていて、「元気になってよかった」と労ってくれる声が、あちこちから聞こえた。2023年に乳がんを経験したとき、こんな日が来るなんて想像もできなかった。

あのとき心配してくれた人たちに、今度は私のコーヒーで笑顔になってほしい——そう願って準備してきたイベントだったから、その言葉のひとつひとつが、じんわりと沁みた。

いちばん感動したのは、頑張り屋さんたちが香りを嗅いだ瞬間、ふっと顔がほころぶ、あの表情だった。


「美味しいね」と言ってくれて、私がなぜコーヒー屋を始めたのか、焙煎でどんなことに苦労したのか、丁寧に耳を傾けてくれた。ただ飲むだけじゃなく、味わってくれた。
そして、笑ってくれた。

一杯のコーヒーが、島の暮らしに小さな豊かさを届けられたなら。
そう願って始めたことが、想像を超えるかたちで返ってきた三日間だった。

病気を経て、自分を大切にする時間を知って、神戸で豆を煎りはじめて、故郷に帰ってきた。

遠回りに見えた道のりは、全部このためだったのかもしれない、と片付けをしながら思った。




 

 

【謝辞】

今回のイベントにご協力くださった皆さまへ、心からの感謝を込めて。

撮影:
しまの映像屋:川上精一さん
高校生フォトグラファー有馬えにしくん

運営サポート:
Yoron emA 代表 日高明日香さん、旦那様
有馬淳兄ちゃん・瞳姉ちゃん
学び島 田畑香織さん
山下智子(親友)
成井美佳(従姉妹)

お弁当:
美味しいお弁当を作って元気をくれた、リメンバーさん

本当にありがとうございました。
(ミッシークトートウガナシ)


 

そして、、、
与論島でヨコロンコーヒーを手軽に飲みたい!というお声をいただきまして、
この度Yoron emAさんにてコーヒーバッグの販売が開始いたしました。

自分のために、
大切な人への感謝の気持ちを込めてプチギフトに

日々頑張る方の、「自分ファースト」な時間にヨコロンコーヒーが寄り添えたら嬉しいです。


ヨコロンCoffee焙煎所 大山ようこ