オンラインショップをプレオープンして、
最初のご注文が入りました。
画面の向こうで、ひとつの“カートに入れる”という動作が、
こんなにも心を震わせるものだとは思いませんでした。
誰かが、わたしの焙煎した豆を選んでくれた。
その事実だけで、胸の奥がじんわりと温かくなりました。

注文が届いた瞬間、
私は焙煎所の机に手を置いて、
しばらく深呼吸をしました。
「この香りが、どんな場所に届くんだろう」
「誰が、どんな気持ちでこの一杯を飲むんだろう」
そんなことを想像しながら、
ひとつひとつの豆袋に手を添えます。
まるで手紙を送るように、
相手の暮らしを思い浮かべながら。
この仕事を始めたとき、
“誰かのほっとする時間をつくりたい”と思っていました。
その願いが、ほんの少しだけ形になった瞬間。
“売れた”ではなく、“届いた”。
その言葉が一番しっくりきます。
生産者の手から渡った豆を焙煎し、
袋に詰め、発送し、
遠く離れた誰かの台所やリビングに届く。
その一連の流れの中に、
たくさんの“想いのリレー”があることに気づきました。

コーヒーは、ただの飲み物ではなく、
人と人をやさしくつなぐ香りのようなもの。
最初の一杯を選んでくれた方へ。
あなたの暮らしに、この香りが少しでも寄り添えたなら、
それだけで、この焙煎所を始めてよかったと思えます。
——これからも一杯ずつ、心をこめて。