フェアトレードという言葉を初めて聞いたのは、
この焙煎所を始めるずっと前のことでした。
“公平な取引”という意味の中には、
数字では見えない人の暮らしがあります。
遠く離れた土地で、
太陽の下、手作業で豆を摘む人たち。
その姿を想像すると、
自然と背筋が伸びるような気がします。

YOKORON Coffee Roasteryでは、
生産者の顔が見える豆だけを選んでいます。
どんな土地で、どんな想いで育てられたのか。
それを知ることは、味を知ることと同じくらい大切だと思うからです。
フェアトレードとは、
“助ける”ことではなく、“敬意を払う”こと。
遠い国の誰かが、
「この仕事を誇りに思えるように」
その想いに寄り添うこと。
私は焙煎をするとき、
豆の色や香りを見ながら、いつも心の中で
「ありがとう」とつぶやいています。
あなたがこのコーヒーを淹れるとき、
その香りの奥に、
小さな畑で笑う生産者の姿が重なって見えるかもしれません。
その一杯が、やさしさの循環の中にある。
それがフェアトレードの本当の意味だと感じています。

コーヒーは、誰かの手から手へ渡り、
やがてあなたの暮らしに届く。
その流れの中に“ありがとう”が溶け込んでいる。
——今日もまた、焙煎機の前で祈るように火を見つめながら、
この香りが世界のどこかの笑顔とつながっていることを思います。